はんこ彫刻資格の最高峰とされる「一等印刻師」、さらに現役の職人では指折り数えるほどしかいない、甲州手彫り印章の「伝統工芸士」の称号をあわせもつ名人、遅澤流水による完全手彫り印鑑です。
一等印刻師 伝統工芸士 遅澤流水
甲州手彫り印章の伝統工芸士。印章彫刻資格の最難関といわれる一等印刻師(いっとういんこくし)。
いずれの資格も現役の職人では希少な存在となっている。
数名の弟子をもつ職人であった父・遅澤久之の指導を一身に受け、ハンコの”粋”を極めたような繊細で美しいデザインと確かな彫刻技術に支えられた、息をのむほどに美しい彫刻に昔からのファンも多い。
主な作品例
- 広島平和記念公園印
- 阪神大震災復興計画
- 祝御成婚優秀作品印譜集
- 瓜田不納履梨下不整冠
- 東欧諸国問題研究会
- 奏人如踊
制作工程
- 1
面 訂 - 肉眼では確認できない印面のガタつきを、トクサで擦って平らに修正します。
- 1
- 2
朱打ち - 粗彫りを行う際、筆書きした文字の線を判りやすくする為に朱色の墨を印面に均等に塗ります。
- 2
- 3
字割り - 分指し(ぶさし)という定規のような道具を使って印面に線を引き、文字を入れる比率のバランスを決めます。
文字の密度や全体のバランスを見ながら、最も美しい仕上がりになるように練り上げていきます。
- 3
- 4
字入れ - 小筆を使って印面にじかに文字を書き入れていきます。
朱墨で何度も修正を重ねながら、納得いくまでデザインを練り上げます。
- 4
- 5
粗彫り - 墨で手書きした文字以外の朱墨が残った部分を文字を傷つけないよう細心の注意を払いながら印刀で丁寧に彫っていきます。
のちの仕上げ作業とともに、流水の真骨頂である流麗な刀さばきが冴えわたる工程です。
- 5
- 6
面擦り - 粗彫りが終了したら再度トクサで印面を擦り、一度打った墨をすべて落とします。
字入れ工程において何度も墨で修正を重ね、印面に墨による凹凸ができてしまうためです。
- 6
- 7
墨打ち - 仕上げ彫りの際、粗彫りで彫った文字の輪郭を確認しやすくするために、面擦りで墨を落とした印面に再度墨を打ちます。
柘には墨を、水牛などには朱墨を使います。
仕上げ彫りの完成度を高めるために欠かすことのできない大切な作業です。
- 7
- 8
仕上げ - 仕上げ刀で文字と枠を仕上げます。流水の真骨頂である流麗な刀さばきがいかんなく発揮されます。
これにより流水の特長ともいえる生き生きとした躍動感が生まれます。流水が全身全霊で印鑑に”生命(いのち)”を吹き込む、最も大切な工程です。
わずかコンマ数ミリの微調整が何日も続きます。
仕上げ彫りといえば文字だけに注目が集まりがちですが、流水の手彫り印鑑の枠は欠けにくくなるよう土手を厚く仕上げ、耐久性をより高める工夫がなされています。
- 8
- 9
試し押し - 納得いくまで仕上げたら、紙に試し押しをしてイメージどおりに仕上がっているか確認します。
一等印刻師・流水といえど、これでよしと思っていても実際に紙に押してみると修正すべきポイントがはっきりと浮かび上がってきます。
ここからまた気の遠くなるような調整作業が始まります。
- 9
- 10
最終調整 - 試し押しを重ねながら、イメージどおりになるまで何度も仕上げ刀を握り、納得のいく仕上がりになったらようやく1本の作品が完成します。
流水の性分から、納得がいくまでは絶対に完成品とはしないため、出来上がるまでに10日ほどかかります。
何日もかけて一心不乱に取り組んだ作品が最高の出来に仕上がったとき、それこそが流水が最も喜びを感じる瞬間です。
- 10
完全手彫りの書体見本
完全手彫りの納期は約2週間程度となります。
- 吉相体 (きっそうたい)
- 篆書体 (てんしょたい)
- 太枠篆書 (ふとわくてんしょ)
- 古印体 (こいんたい)
- 隷書体 (れいしょたい)
- 楷書体 (かいしょたい)
- 行書体 (ぎょうしょたい)
- 草書体 (そうしょたい)